自由席は足元空色の乗車位置

 
 布団にくるまりながら、頭の中で想像した。それだけで胸がどきりと震えた。

 昼下がり、ふらりと高いところへ行って、風に当たって来た。有言実行というわけじゃないけども。見晴らしが良くて、気持ちが良いね。「ここなら一発だね☆」などと思いつつ、「はぁっぴー ぶるぅーすかいとりっぷ」などと口ずさんでみる。何日の何時でなんて、野暮ったいことはするもんじゃない。気ままな空の旅は自由席でちょうど良いのだ。気が向いたときに、ふらっと風に乗ればいい。今日は眺めるだけで終わってしまった。やっぱり、ボクはまだまだボクだ。でも、一体何が足りないのだろう?

 哲学の授業はイギリス経験論の解説。そうか、ボクに足りないのは経験だったんだ。生きることも、死ぬことも経験が足りないから、ままならないのだ。まずは、慣れるところから。時折、例の場所で風を感じてみようと思う。