さみしげなさざなみ

 ボクが零した言葉は雫となってボクの世界をゆっくりと沈めてゆく。海の深さは日に日に増してゆき、ボクが歩むたびに水面に映る星の輝きが揺れる。

 生に対して未練はないはずだった。少なくとも表面上は。けれども、海に消えてゆく「死にたい」という言葉そのものが、裏を返せば生への強い執着の表れなんだから、皮肉なものだ。本当に未練がなければ「死にたい」ではなく「死ぬ」という言葉が出てくるだろうし、想いが強ければ言葉すら残さないだろう。

 所詮「死にたい」という言葉は予め決められた単なる救難信号に過ぎず、そこに深い意味はない。しかし、それを発したところで何か変わるはずもなく、さざなみに溶けてゆくだけ。だから、さよならを告げよう。もう、「死にたい」なんて言わないよ。

 これからはたった2つの音だけ。それが海を育み、さみしげなさざなみとなってボクに息苦しさを与えた後、穏やかな眠りに就かせてくれる。