「偽りなき者」(2012デンマーク)

少女の何気ない嘘によって人生を破壊された男が、理不尽な迫害を受けながらも、自らの尊厳を守るべく周囲のいわれなき疑惑と憎悪に懸命に立ち向かっていく姿を厳粛に描き出した衝撃のヒューマン・ドラマ。デンマークの小さな町で幼稚園の教師として働くルーカス。ある日、彼にプレゼントを受け取ってもらえなかった園児クララが、軽い仕返しのつもりで発した嘘が彼の人生を狂わせてしまう。“ルーカスにいたずらされた”というクララの証言を鵜呑みにする大人たちに対し、懸命に無実を訴えるルーカスだったが…。

人間は恐ろしい生き物だ。原題の「Jagten」とは‘狩り’を意味するらしいが、閉鎖的なコミュニティーのなかで生きていくには時として何者かをスケープ・ゴートに仕立て上げなくてはならない。そして、一度植えつけられた憎悪はたとえそれが虚構に基づくものであっても、事実として人の心に巣食う。人間の卑しさや悍ましさをまざまざと見せつけられた。だからこそ‘最も公平に配分されているであろう’良識に基づかなくてはならないのだ。

独断と偏見に基づく私的評価【★★★★:秀】