「光のほうへ」(2008)

10代のころに幼い弟を亡くし、心に深い傷を負ったまま大人になった兄弟。アルコール依存症の母親のもとで悲惨な子ども時代を過ごし、人を愛するすべも愛されるすべも知らずに育った彼らは、互いにかかわることなく別々の人生を送っていた。それぞれに怒りやかなしみ、苦悩を抱えて生きてきた兄弟は母親の死をきっかけに再会し、再び気持ちを通わせようとするが……。

「偽りなき者」と同じ監督の作品。幼少期における家庭環境はその後の人生に大きな影響を与え、兄弟はそれぞれ社会に適応できずにいる。他人と関係性を上手く気付けずにいる兄。麻薬におぼれる弟。母親の葬式で再会することになるが、それはあまりにも遅すぎた。残酷な結末ながらも、一筋の希望の光は残されているように思えた。
時系列順に展開せず、兄の時間軸と弟の時間軸をストーリーを進めながら徐々に一致させていく技法は面白いと思った。

独断と偏見に基づく私的評価【★★★☆:優】