好意が怨嗟に変わるとき

 何事もうまく行かないものだ。やはり神さまは存在する。でなければ、お風呂上りのさっぱりした体でどうして床にぶちまけたコーンを拾う*1羽目になるのだろうか?

 子供の頃、1日がとても長く感じた。今は1日はそこまで長くは感じない。年を取ればきっと1日を短く感じるのだろう。というのも、1日の長さの体感は「1日/今まで生きてきた日数」と表現することができないだろうか。つまり、子どもの頃は分母が小さいがゆえに、全体に占めるその1日の割合が大きいから、1日を長く感じるといった具合である。
 そう言った意味で時間は万能薬だ。苦しみの渦中にいるときはその渦を大きく感じるものだが、そこから抜け出した時に渦を俯瞰してみると渦は小さく見え、「たった、これだけの事だったのか」とすら思えることもある。ほろ苦い経験も時と共に癒され、思い出に変えてくれる。今の僕に必要なのは時間なのかもしれない。
 けれども時の流れを変えることが出来ない。ならば僕が時間軸を移動すれば良いのではないか。全ての可能性を擲って、時間を前借する。不確実ながら不可避の死を自ら掴み取るということは、ある意味では時間軸の超越と言えるのではないか。もっとも、神さまの手元には僕の一生のダイヤグラムがあって、それを知らない僕だけが「これってタイムリープじゃん!」と盛り上がっているだけなのかもしれないが。

 最近読んだ本に、「原子力発電所を地方に置くことは正しいのか?」という考察が載っていた。結論から言えば、現実社会には功利主義の側面もあるゆえにやむを得ないということらしい。国も電力会社も自治体も「万が一のために想定はしているけど、事故なんて起きやしない」という認識を持っていただろうし、僕もまた安全神話*2を信じていたし、豊かな故郷が目に見えぬ恐怖で穢されるとは思ってもいなかった。
 みんな多数派でありたいと思っているし、自分が少数派になるなんて思ってもいないのだ。「みんな平等にあるべきだ」なんて理想論を振りかざすつもりは毛頭ないが、「大震災は天罰だ」*3と一首長が言えば、「勧誘して金を貰っていたくせに、いまさら被害者面か」とか「汚染された野菜を売りつけるな*4、お前らも加害者だ」とネットではそんな論調が繰り広げられ*5、こんな奴らの幸福のために犠牲を強いられえるのかと思うと、遣る瀬無くなる。
 資本主義の豊かさと同じで、幸福も誰かの不幸せの上に成り立っているのだろう。その事実を忘れ、心を失った功利主義は果たして正しいのだろうか?
*この手の話は危険厨、安全厨みたいな香ばしい輩がわんさか集まってくるので、あんまり言及を控えてきた*6のだけど…… 別に議論をしたいわけじゃないのでコメント・反論には応じませんので悪しからず。もっとも、こんなブログ大して見られていないわけだが。

 功利主義をわざわざ持ち出したのは、今の自分の状況に当てはめるのではないかと思っての事。研究室と距離を置き始めてとうに1年は経つけど、やっぱり僕は研究なんかしたくない。教授曰く「良いテーマだし、期待してるよ*7」、さらに実用化できたら技術革新も夢じゃないテーマなんだって。はぁ、そうですか。学生の身分でこんなわがままを言うのも可笑しな話で、社会に出れはそんなことを言ってる暇もなく、社会の歯車となってせっせと働かなくてはいけないのだろう。技術の発展という目的のためならば、ちっぽけな存在である僕を打ちひしぎ、存在意義を脅かすことはきっと正しいことなんだろうね。
 昨日は秋学期のガイダンスだったのだけど、結局迷った末に行かなかった。行けば「秋学期からは復帰します」というアピール*8になったのだろうけども、ガイダンスのためだけに5限という遅い時間に行きたくないし、昼夜逆転で眠かったし、もっといえば復帰すると一度は伝えたものの迷いが生じてる状況で、どうしてガイダンスに行くことができようか。
 成績はネットで確認できるので確認、落としていなかったようで一安心。ただ、学部時代にもらったことがないC評価をつけられ*9、いろいろ考える。もっともその科目はうちの教授のゼミなのだけど。そりゃそうだ、研究室に来ない上、研究も進まない。それでよく通して貰えたと思う反面、それだったらいっそ落としてもらった方が清々するよ。研究室と距離を置いていたものの、履修登録した授業にはしっかりと出ていたわけで、こちらはいつもどおりの評価。別に評価を鼻に掛けるわけじゃないけど、やるからには頑張って努力はするのだ。だからこそ、お情けのC評価に煮え切らない。これは末代までの恥だよ、まったく。*10

 いっそ、「やる気が無いのなら、もう来なくていいよ」と言ってもらえたほうがどんなに幸せなことか。何回か話し合いを重ね、続けるにも移るにも、そして辞めるにも理解を示してくれるようだ。最後にもらったメールには「人生はやり直しがききます。自分の信じる道を歩んでみたらどうでしょうか?」と書いてあった。なかなかありがたい言葉を言ってくれるじゃないの、額面通り受け取るならばね。僕には2つばかし引っかかる点がある。
 ゲームのように、うまく行かなかったらあらかじめセーブしておいた地点に戻ることが「やり直し」なのであって、悶々と過ごしてきた僕の1年間はどうあがいても消すことが出来ない。「やり直す」なんて簡単に言うけども、そんなに生易しいものじゃない。むしろ「軌道修正」と言った方が的を得ているのだろう。言葉の表現で1つ揚げ足取り。
 もう1つは、僕には自分の道なんてあってないようなものだ、ということ。欲望のままに選択できるのであれば、今すぐにでも辞める手続きをしたい。それが出来たら、さぞかし解放的な気分になれるだろう。だけど、その先のことを見据えるとあまりいい選択肢とは言えない。将来的には何らかの形で働かなければならない。中退なぞしたら、新卒至上主義の就職市場では傷物扱いだと思うし、経歴*11に傷をつけないことに越したことは無いだろう。取り柄の1つでもあったら、そんな不安を跳ね除けて新しい道を切り開くことが出来たのかもしれない。新たな道を切り開くのは簡単なことではない。弱い僕は唯一目の前にある意にそぐわない道に進み、打ちひしがれる他ないのだろう。
 先日、「僕とツンデレとハイデカー」という本を読んだ。いわゆる哲学の入門書*12なのだが、分かりやすくてなおかつ哲学者の顕現である女の子が可愛いくて、それはそれは良い本なのだ。*13 個人的に好きなデカルト、カント、ニーチェの顕現が言った教訓をまとめると「自分を肯定し、理性と欲望が一致するように努めて、一番ベストだと思われる決断をすること。そうすれば必ずどこかに辿り着く」ということなのだが、ちっぽけな自分は理性と欲望の板挟みで潰されてしまいそうだ。もう、だめかもしれない。

 これも以前にした話かもしれないが、研究室を選ぶ際、どこにも興味をそそられず、最終的には教授の人柄で決めた。学部の3年間自分なりに頑張ったものの、配属後の凋落ぶりは語る必要もなかろう。今まで嫌なこともたくさんあったが、今回ばかりはもうどうしようもない。やる気がないというレベルではなくて、やるならいっそ死んでやるというレベル。文学部の哲学概論の授業には出てみたいと思うあたり、全てにおいてやる気がないわけじゃないのだ。あくまで研究に限った話。
 配属当初は自分でも驚くくらい意欲に溢れていた。ところが機材が使い物にならなくて、実験も何もできずただただ腐っていく日々。確かに、モチベーションを維持できなかった僕にも責任はあるけど、機材が壊れなかったらという反実仮想する度にやりきれなくなる。そういうことを含めて、研究出来なかった責任は僕になすりつけられるのだ。僕が悪いことも、そうじゃないことも。
 一度ならず二度も距離を置くことになり、教授には申し訳ないなと思っていたのだけど。もし今、研究を辞めたとしたら、僕はきっと教授を許すことなく生きていくだろう。「あなたからしてみれば単なる一人の学生に過ぎないでしょうが、僕の人生はこれ1つだけなんです。やり直しなんて利かないんです。」 やたらと日本に謝罪と賠償を求めてくる某半島人のような言動になってしまったが、責任の大部分が自分に起因することくらい分かっているけど、ほんの少しだけ責任を追及する要素があったがために教授が槍玉に。「教授も可哀想だな」と、他人事のよう*14に思う。教授への好意が怨嗟に変わりつつあると言えども、「教授を恨み続けながら生きるか、それとも弱い自分を恨みながら死ぬか」と聞かれれば僕は後者を選ぶ。

 キルケゴールは「絶望しかけている人があったら、『可能性を持ってこい、可能性をもってこい、可能性のみが唯一の救いだ』、と叫ぶことが必要なのだ。可能性を与えれば、絶望者は息を吹き返し、彼は生き返るのである。」と言っている。僕は「生きることは常に悩みや苦しみが付きまとうがゆえにそれを幸せと言えるだろうか? 悩みや苦しみから解放されることが本当の幸せではないのか?」と密かに思っているので、死ぬことに「可能性」を見出している、皮肉なことに。とはいっても、自分から進んでそういうことをする勇気もないので、死神さん*15との邂逅を待ちわびながら生きているのだ。
 
 僕も何を書きたいのか分からなくなってきた。4時前に書き始め、4:44に保存して*16、ちまちま書き足したり、マックでホットドック買ってきて食べたりで、今は8:30だよ…… つまり、何が言いたいのかといえば自分は嫌な人間であるということと、自分ひとりじゃもうどうにもならないので病院に行ってくるってことです。強引に〆る。

*1:冷蔵庫からお茶と一緒に団子を取り出そうとする→団子の手前に置いてあった使いかけのコーンの缶詰に引っかかる→コーンの罠発動

*2:だいたいこういうものはマスコミが勝手に創り上げて、勝手に崩壊させるものだが

*3:親が親なら、子も子で「サティアン」なんて言っちゃってるしね

*4:これに関してはもっともなことで、国や自治体がきっちりと制限をかけて東電なりに補償をさせるべきだと個人的には思う 結局、行政が(もとから隠蔽・利権体質の東電なんざに期待するだけ無駄)農家の生活を守るつもりがさらさらないから、農家も農産物を作って出荷せざるなく、売れないから利益が上がらないという悪循環に陥るわけで しっかりとした検査体制を整えて、安全性が確認されたならば消費を推進していけばいい話

*5:もっともそれが世論の全てだと思わないし、もっと言えば世論が常に正しいかと聞かれれば疑問ではありますが

*6:以前、twitterでぽつりと呟いたら危険厨のヒステリックババアが絡んできてほとほと嫌な気持ちになった どう思うかは勝手だけど、どうしてそれを人に押し付けてくるのだろうか?

*7:そんなことを言われたのはこうなる前の話で、今はこんな状況だから期待されてないでしょう されても困るのだけど

*8:「僕が来てた」っていう事実が教授に伝われば良いんだけど、たぶんガイダンスには教授は顔出さないと思う、たぶん

*9:4年間を通じて唯一つけられたB評価でさえ、未だにしくじったと思ってるくらい

*10:これはちょっとした冗談

*11:とは言ったって人様に自慢できるような大したもんじゃないけど

*12:ところが本屋によっては哲学コーナーじゃなくて文芸書のコーナーにあったり

*13:詳しくはこちら

*14:自分で槍玉にあげておきながら ひどいマッチポンプ

*15:個人的な死神さま像:大きな鎌が不釣合いな小柄な女の子 新人なのでノルマを達成できず、上司からネチネチ嫌味を言われる 故郷に残してきた母親と妹のために毎月仕送りをしている え、そういうのはpixivでやれって? はいはい、そうしますよ(´・ω・`)

*16:奇遇にも縁起がいい数字ですね(*^_^*)とかで締めくくろうと思ったのだが……