タブラ・ラサ

 経験論の立場では人間の全ての知識は経験に由来し、観念は生得的なものでないとしている。

 生まれつきの人間は「真っ新なキャンバス」、経験は「絵の具」、人生は「キャンバスに描かれる軌跡」。そして、死は「額縁」と言えよう。人は額縁にキャンバスを納められるのを嫌い、恐れている。そして、必死になってキャンバスを絵の具で埋め尽くそうとする。
 意図的に残した余白、オーダーメイドの額縁。一人の絵描きとしてキャンバスと向き合った時、最も大事なことは周りが求める絵を描くことではなく、本当に描きたいものを描くことなのではないかと思う。

 こればかりは哲学的な問題なのであって、死への引力は今までの経験に基づく以上、全てを受け入れざるを得ない。少なくともボク自身は納得しているのだが。