夢野久作/少女地獄

 角川文庫の手ぬぐい柄シリーズから「少女地獄」。「少女」と「地獄」という結びつきようのないタイトル、華やかさと儚さが共存する線香花火のようなデザインがボクの興味を引いた。

 表題の「少女地獄」は3つの短編からなるが、いずれの物語には必ず自殺する人物が登場する。個人的に気になった箇所を引用しておく。

 社会的に地位と名誉のある方の御言葉は、たといウソでもホントになり、何も知らない純な少女の言葉は、たとい事実でもウソとなっていく世の中に何の生き甲斐がありましょう。
*「何でも無い」より

 私の心の底の空虚と、青空の向うの向うの空虚とは、全くおんなじ物だと言う事を次第次第に強く感じてきました。そうして死ぬなんて言う事は、何でもない事のように思われてくるのでした。
 宇宙を流るる大きな虚無……時間と空間のほかには何もない生命の流れを私はシミジミと胸に感ずるような女になって来ました。私の生まれ故郷は、あの大空の向うに在る、音も香もない虚無世界に違いない事を、私はハッキリと覚って来ました。
*「火星の女」より

 感想などは自らの理解の浅さを露呈することになるので控えるが、とにかく奇妙な話ばかりだが、古さを感じさせない一冊だった。