#5

■「自殺について」講読(4)

◆自殺について

人間は、すべからく、自分みずからを単なる生以上のものに高めなければならぬ(p61~)

  • それとは逆の態度を採る場合:悪事をなす時/自殺する時
  • 他のいたずらに長命と安逸な生涯を追い求めている真の俗物と比べれば、彼ら(自殺を遂げる者)の方が、ずっとましである

自殺する人は、意欲から解脱する代りに、この意欲を廃棄する人々である(p63~)

  • 人生の内的な分裂(矛盾)を充分に経験した者の、その生命を捨てる辛さは、みずからを生きようとする意志から解放するに足りうるほどの苦痛に相当する
    • 人間嫌い:人間の持つ性質と愚昧さとを客観的に認識することから生まれる人間全体に対する気持ち
    • 他人に害心を懐く悪人:主観的な感情に基づき、自らの意志が他の人間と絶えず衝突することによる一人ひとりの個人を対象とする憎しみの気持ち
  • 人間嫌いと他人に害心を懐く悪人の関係は、苦行者と自殺する者の関係に似ている

自殺は、まさしく、生きようとする意志のひとつの発現である(p67~)

  • その意志が強ければ強いほど、それだけ早く自殺が実行される
  • 自殺という行為と自殺をなさしめるようにした苦悩は、生きようとする意志に対しその無意味さを突き付けている
  • 明確に把握した意欲の本質的な目標に到達することが不可能だと悟った時、人間は絶望する
  • 自殺するまでに、痛ましい絶望とあらゆる思想の混乱に悩ませられる

生きようとする意志は、死を願うという形をとって、いよいよ明らかに現われ、その極端な表現が、すなわち自殺である(p70~)

  • 自殺によって滅ぼされるものは生そのものではなく、単に現在的な現象に過ぎない
  • 自殺には憂鬱症から起こる病的なものと、不幸に基づく健康者におけるものとの二種類がある
  • 上記のように自殺を二つに種類分けしたところで、本質としては同じこと―自然的本能的な生存願望が耐えられないほどの苦悩によって打ち負かされたというだけのことである
  • 精神的な悩みは肉体的な苦しみを忘れさせ、肉体的な悩みは精神的な苦しみを和らげる