#13

今回は倫理学の観点から自殺について考える。

  • 個人の自由と他者危害原則
    • 個人の自由は最大限尊重されるべきである
    • ただし、「他者に危害を与えない範囲」に限る
    • 自殺の方法によっては他者に危害を与える可能性がある
    • 例:高所からの飛び降りによる、地上を歩く第三者の巻き添え
    • 他者に危害を及ぼさない方法ならどうか?
    • それでも近親者に心理的衝動を与えることは避けられない

→いかなる方法でも自殺という行為は他者危害原則を侵す

  • 身体と自己所有権
    • 自殺=自己の身体を破壊する行為
    • 身体が自らの所有物であるならば、その処分権も有する
    • 身体の所有権を説いたロックは自殺の自由を認めなかった
    • 身体=自己の所有物という見方に問題があるのではないか

→身体は個人的な消費財とは大きく性質が異なる

  • 存在の公共性
    • 自己所有権よりも公共性が優先されるべきである
    • 例:珍しい血液型で適合者が少ない場合
    • 例:天才的な知性を有し難解な問題を解決できる場合
    • 自分という存在は自己所有物であるとともに社会全体の共有財産でもある
    • 社会の一員としての責務は時として自己所有権を制約しうるが、社会全体の自由を高めるためには致し方ない

→自殺はエゴイズムの実践でもあり、無責任な行為である

  • 結論
    • ゆえに、自殺は倫理的に望ましくない

参考文献:本当にわかる倫理学/田上考一(日本実践出版社、2010)

言っていることも真っ当でよく分かる。ただ、毎年3万件程度自殺が実行され(ここ2年は3万件を下回ったが、変死として扱われるもののなかに自殺と思われるものも多く存在しているとか)ており、単に自殺=エゴイズムの実践として割り切るのはいささか乱暴ではないか。
最終的に、自殺を含めた生き方については倫理的な側面もあるのだけろうけど、突き詰めていくとある種の美学に行き当たるのではないのだろうか? 死は神と同じく形而上的なテーマであるがゆえに、自殺を取り巻く一連の議論をややこしいものにしている。

おまけ

もんだい:いきはふたり、かえりはひとり、これなーんだ?

こたえ:だざいおさむ

伊集院光深夜の馬鹿力ちびっこなぞなぞより。

世の中には、不思議なもので、哲学者であるとか芸術家といった類は自殺がある程度許容される傾向があるのは興味深い。