#14
■「自殺学入門」講読(1)
今回から寺山修二「自殺学入門」を題材に、講読を行っていく。
◆1.自殺機械の作り方
- 人類の歴史は道具の歴史である
- サルは道具を発見したことから人間になった
- 道具の文明化→機械
- 道具を使ってきた人間は、機械に使われるように
- 「人類は道具とともに発展してきて、機械とともに滅亡してゆくだろう」
- 現代の機械は‘自殺機’ではなく‘他殺機’である
- 例:自動車、電車、煙突、汚染水…
- これらは‘殺すこと’を目的としてつくられたものではなく、代用品の他殺機として使われている
- 「人間いかに死ぬべきか」という問い
- その尊厳を守り、方法化し、殺されるという受け身の死を廃さなければならない
- 死ぬ自由を自分自身で創造する必要性
- 自殺には自殺機械が必要となるのだ
◆2.上手な遺書の書き方
(1)遺書の二つの役割
- 死を修辞し、相手に気持ちを伝えること
- 気持ちを伝えられれば、形式は特に問わない
- 事務を処理すること
- 遺産の分割などに関わること
- 上記の他に趣味としての遺書も存在する
- 例:太宰治は実に多くの遺書を書いた
「よもやそんなことはあるまい、あるまいけれど、な、わしの銅像をたてるとき、右の足を半歩だけ前へだし、ゆったりとそりみにして、左の手はチョッキの中へ、右の手は書き損じの原稿をにぎりつぶし、そうして首をつけぬこと。いやいや、なんの意味もない。雀の糞を鼻のあたまに浴びるなど、わしはいやなのだ。そうして台石には、こう刻んでおくれ。ここに男がいる。生れて、死んだ。一生を、書き損じの原稿を破ることに使った」<「春ちかきや」の一節>
(2)遺書の用語
- 自分が日頃口にすることばで記すべし
(3)遺書は自筆
- 自殺のたのしみの半分は「遺書を書くたのしみ」である
- 字が下手でも、他人に代筆させてはならない
- 他人の遺書を参考・引用するのは構わないが、盗作はよろしくない
(4)遺書の文字
- 丁寧なほど良い
- 字の乱れは心情の乱れと推量されかねない
- ただ、誤字を多少含ませておいた方が印象には残りやすい
(5)遺書はすぐに封をせず、読み返すべし
- 大切なことを書き抜かしていたり、不備な点がないか確かめる
- 死んでからは‘書き直し’はできない
(6)遺書の形式
- 用紙
- 文章を虚構化してしまう原稿用紙は用いない
- 便箋あたりが適しているのではないか
- 罫のない便箋を用いる場合は、文字が曲がらないよう注意せよ
- 封筒
- 派手なものは感心しない
- 入れ間違いに細心の注意を払うこと
- 葉書
- 沢山の人に出せるのがメリット
- 15〜20文字×12〜13行が適当
- 絵葉書ならば幾分少なくても良い
- 遺書は自分の死を叙事詩化する方法である
- 上に示したものはあくまで一例に過ぎない
- 豊かな発想に基づく自殺の例:ラジオ自殺
- 体に巻きつけたコードに流れるラジオの電流による自殺
- この場合、彼を死なせたラジオから流れるさわやかな朝の宗教番組のアナウンスが彼の遺書であった