#15

■「幸福について-人生論-」講読(1)
寺山修二「自殺学入門」の講読は終わっていないが、並行してショーペンハウアー著の「幸福について-人生論-」の講読を行っていく。
*これまで自殺学ばっかりだったので、幸福論にも触れておかないといけないと思いまして。

◆第一章 人間の三つの根本規定

無常の人間の運勢に現れた差別の基礎をなすものが、三つの根本規定に帰着させられている(p10)

  • 人のあり方
    • 広い意味での人品、人柄、人物
    • 健康、力、美、道徳的性格、知性なども含む
  • 人の有するもの
    • あらゆる意味での所有物
  • 人の印象の与え方
    • 他人に対する思惑であり、名誉と位階と名声とに分けられる

「われわれのうちにある幸福の原因は、外界から生ずる幸福の原因より大きい」(p11)

  • エピクロスの弟子であるメトロドロスの書物に記されている一節

各自の生きる世界は、何よりもまず世界に対する各自の味方に左右され、頭脳の差異によって違ってくる。頭脳次第で、世界は貧弱で味気なくつまらないものにもなれば、豊かでおもしろく味わい深いものにもなる(p12)

  • 内心の快不快は人間が感じたり意欲したり考えたりする働きの結果である
  • これに反して外部にあるいっさいのものは間接的に内心の快不快に影響を及ぼすに過ぎない

⇒同じ状況のもとにあっても各自の生きる世界は別々である

人間は(中略)自分の意識の中に嵌まりこんで、直接には自分の意識のなかで生きているにすぎない(p13)

  • 現実、言い換えれば内容の充実した現在というものは二つの半面からなっている
    • 主観的な半面
    • 客観的な半面
  • 一切の事物は、直接的には結局意識のなかに存在し、意識に対して推移進展する
    • 意識そのものの性質状態が何よりも重要である
  • 人間に与えられる幸福の限度はあらかじめ決められている
    • とりわけ精神的能力の限界=高尚な享楽の能力

 

人生の幸福にとっては、われわれのあり方、すなわち人柄こそ、文句なしに第一の要件でえあり、最も本質的に重要なものである(p18)

  • 人柄は運命に隷属したものではなく、我々の手から奪い取られることがない
    • 他の二種の財宝は単に相対的な価値を持つのに反し、人柄の持つ価値は絶対的なものである
    • 他の二つの財宝は客観界にあり、その性質上、獲得可能なものであり誰でもそれを手に入れる見込みがある

⇔主観界にある人柄は、我々人間の力だけではどうすることもできない

われわれとしては、与えられた人柄を最大限に活用するだけである(p19)

  • 柄に合った計画に集中し修行に励み、柄に一致する地位や仕事、生き方を選択することである

人の本来有するもの(人のあり方)こそ、その人の人生の幸福のために最も本質的なものなのだ(p22)

  • 人としてのあり方の方が、人の有するものに比して、我々の幸福に寄与することがはるかに大きいに違いない
    • 例)莫大な財産の維持のために不可避的に生ずる心労
    • 精神的な教養を積む<富を殖やすという風潮
  • 内面的な貧乏と外面的な貧乏
    • 外面的な富は内面的な富の代わりにはなりえない