「大統領の執事の涙」(2013米)

綿花畑で働く奴隷の息子に生まれた黒人、セシル・ゲインズ。ホテルのボーイとなって懸命に働き、ホワイトハウスの執事へと抜てきされる。アイゼンハワーケネディ、ジョンソン、フォードなど、歴代の大統領に仕えながら、キューバ危機、ケネディ暗殺、ベトナム戦争といったアメリカの国家的大局を目の当たりにしてきたセシル。その一方で、白人の従者である父親を恥じる長男との衝突をはじめ、彼とその家族もさまざまな荒波にもまれる。

ボクが小学校だったか中学校だったかの頃、アメリカは「人種のるつぼ」と教えられてきたが今は「人種のサラダボウル」と言うらしい。そもそも「るつぼ」とは高熱下で物質を溶融させるときに用いる道具であるが、異なる民族同士が完全に融和することなど不可能であり、それゆえに差異を認め、尊重しあうという意味で「サラダボウル」という表現に変わったのであろう。しかしながら、差別や偏見が無くなったかと言えばそうではなく、今もなお平然とそのような悪しき習慣が残っているのも事実である。
歴代の大統領と大国アメリカの歩みを執事という視点から俯瞰的に捉えつつ、「人種」という概念によって翻弄されてきた黒人たちの葛藤が胸を打つ。「マンデラ 自由への長い道」も同じ人種問題をテーマとしているが、こちらの方が映画として良く出来ていると思う。
[ココカラネタバレ]
白人ではない初めての大統領としてオバマが大統領に選出されるところで映画が終わるのだが、肝心のオバマアメリカ大統領としてのリーダーシップを発揮し切れていないのがラストの盛り上がりに水を差しているのが残念。ただ、これは映画ではなく現実世界の問題なのだが。
[ココマデネタバレ]

独断と偏見に基づく私的評価【★★★★:秀】