「自由からの逃走」講読4

だいぶ間が空いてしまったけど……

◆第三章 宗教改革時代の自由
 2 宗教改革の時代

  • ルター主義とカルヴィニズム
    • 従来の富裕な上流階級ではなく、都市の中産階級や貧困階級、農民の宗教として根付く
      • これらの人々は無力と不安に支配され、自由と独立を欲していた
    • 宗教の教義は経済的秩序の変化のみならず、不安との戦うための解決策を示した
  • 新しい教義の社会的心理的意味
    • 心理学的分析=その原理の真理性についての判断は含まない
      • 真理性の問題は問題それ自身の論理的構成という面にのみよって決定される
      • ex)原理や思想の拝啓に潜む心理的動機≠原理の妥当性、原理の有する価値についての合理的判断には関わらない
    • 原理の心理学的分析=問題を意識し、その解答をある方向に追究しようとする主観的な動機
  • 宗教的教義や政治的原理に対する2つの心理学的問題
    • 教義の創造者の性格構造と思想の関連性
    • 教義を受け取る側である社会集団の心理的動機
    • 指導者の心理と支持者の心理は密接に結びついている
      • 指導者は彼の主張を受け入れる支持者の性格構造・思想をより端的に現している
  • 思想やイデオロギーを分析する際の課題
    • 思想がイデオロギーの体系の中でどれだけの重さを持っているか
    • 思想の真の意味とは異なる、合理的な面を取り扱うかどうか
  • 宗教改革以前のカトリック神学の特徴
    • 人間の性質はアダムの罪によって堕落していた
    • しかし、もともと人間の意志は善を求める自由を持っている
    • 人間の努力はアダムの救済に役立ち、さらにはキリストの死の功業に基づく教会の秘跡によって罪人は救われる
  • トマス・アクィナスの神学
      • 意志の自由を根本的な教義の一つとして強調→自由の原理と予定説の矛盾
      • 救済のためには人間の努力が必要である
  • 免罪符
    • 免罪符を買うことにより、ひとは永遠の制裁(=この世の制裁)から救われる
    • 「救済のために努力しなければならない」という教えとの矛盾
    • 教会の権威と秘跡に頼るこの行為は反面、希望と安定の精神を有している
      • 人間が容易に自己を制裁から解放することが出来るならば、罪の重荷は非常に軽いものになる
  • 中世の教会
    • 人間の尊厳や意志の自由、努力の有効性を強調
    • 神と人間の類似、神の愛を確信する人間の権利を強調
    • 人間はみな平等であり兄弟である

→中世末期、資本主義の発達に伴いこれらの教義に対する困惑と不安の発生

  • ルターの神学
    • カトリック的伝統と2つの点で異なる
      • 信仰や救済観といった宗教的問題は主観的個人的経験に基づく独立なもの
      • 人間の性質には生まれながらの悪が存在し、意志は悪に向かう

→みずからをけなし、個人的意思とおごりを打ち破るときにのみ神の恩寵は訪れる

    • 中世末期、大衆はルターの教義を受け入れ革命運動を起こすようになる
      • しかし、教会に対する過激な攻撃は社会秩序の根底までもを破壊しようとした
    • 封建的秩序の崩壊と資本主義の発生による中産階級のジレンマ
      • 精神的な権威に縛り付けられた絆からの自由は、同時に孤独と不安感、無意味と無力感をで人間を圧倒する

→ルターの信仰:自己を放棄することによって愛されることを確信する(=指導者に対する個人の絶対的な服従

    • ルターのパーソナリティの矛盾
      • 世俗的な権威と専制的な神の権威に威圧
      • 教会の権威への反抗

→彼の権威主義的性格が宗教的な教えと密接に関係している

  • カルヴァンの神学
    • カルヴァンの思想のテーマ:自我の否定と人間的プライドの破壊
      • これにより来世に対する準備に専念することが可能になる
    • カルヴァンの予定説の心理的意味
      • 人間の意志と努力の無価値化(=人間は神の手の中になる無力な道具に過ぎない)
      • 非合理的な懐疑を沈黙させる
    • 2種類の人間
      • 救われる人間と永劫の罪に定められている人間
      • 人間の平等の否定→選民意識→ナチのイデオロギー
    • 道徳的努力と道徳的生活の強調
      • 努力するという行為自体が救われた人間に属する1つの証拠である
      • 不安からの逃避としての努力や活動
  • 中産階級の敵意と反感
    • 保守的な中産階級は社会を安定・発展させることでその恩恵に預かろうとした
      • 内的に抑圧された敵意は直接表現されない形に変化していった
    • 敵意の表現方法として人間の罪悪性を強調した自己卑下と謙遜
    • 宗教改革以降、宗教的・世俗的な合理化に基づく「義務」の意識
      • 自分自身によって自らの中に引き入れられた「良心」という名の奴隷監督者
      • 個人の良心に基づく願望や目的=外部の社会的要求が内在化したもの
  • 宗教改革以降の自由の変化
    • 社会過程における経済的、心理的イデオロギー的要素との相互作用
    • 封建制社会の崩壊は人々に孤独と2つの意味での自由をもたらした
      • 旧来与えられていた安定性と帰属感の喪失→身分的拘束からの自由と意思決定の自由
    • 社会階級と生活状況に応じた異なる解釈の2つの自由
      • 貴族階級:自己の運命の決定、人間の力や尊厳、意志の自由の協調
      • 中産階級自由によって脅かされ、覆され、孤独に突き落とされた

プロテスタンティズムによる新しい世界観の提示

◇高坂あかなのまとめ
中世におけるキリスト教の影響力は想像を絶するものであった。宗教改革は単にキリスト教内部での出来事ではなく、民衆の世界観を規定していたキリスト教の変革は社会、経済、文化等幅広い分野で新たな価値観を投じ、とりわけ神と信徒の関係性が集団的なものから個別的なものへと変化したことにより個人や自由という概念がもたらされ、それを下地として資本主義が誕生する。宗教改革というパラダイムの転換は現代社会の基礎となったが、一方で新たな問題をもたらすことになったことに留意しなければならない。