「自由からの逃走」講読5
◆第四章 近代人における自由の二面性
- プロテスタンティズムの教義とその精神
- 近代社会機構が人間に与えた2つの影響
- 独立性、自律性、批判性
- 孤立、孤独、恐怖
- これらの矛盾する2つの傾向が1つの原因からもたらされた
- 人間は自由の古い敵から自らを解放したが、同時に異なった性質をもった新たな敵を生み出した
- 従来の外的な束縛ではなく、自由なパーソナリティの実現を妨げる内的な束縛
- ex)自然科学や常識というものに対する過信、絶対視
- 自由の問題は量的なものではなく質的なもの
- プロテスタンティズムと資本主義
- 人間の魂の解放を目指したプロテスタンティズムを、資本主義は精神的、社会的、政治的に遂行していった
- 成功する機会と等しく失敗する危険を与えられる経済的競争に個人は晒された
- 資本主義は伝統的な束縛から解放しただけでなく、人間の自我を成長させた
- 同時に個人を孤独な孤立した存在とし、無意味と無力の感情を与えた
- 個人主義的活動の原理
- 中世と近代における経済活動の差異
- 中世的組織:経済活動は目的に対する手段ないしは人間の精神的な救済であった
- 近代的組織:経済的活動や成功、物質的獲得が目的となった
- 人間は巨大な経済的機械の歯車と化した
- 資本家も労働者も禁欲精神と人間を超えた目的に服従する精神にしがみついていた
- 利己主義と自愛
- 愛はある「対象」を肯定しようとする情熱的な欲求である
- その対象の幸福、成長、自由を目指す積極的な追求、内面的なつながり
- 利己主義と自愛は逆のものである
- 利己主義=決して充足されることのない貪欲
- 利己主義は自愛の欠如に基づいている
- 現代人の行動を規定しているのは社会的な自我である
- 愛はある「対象」を肯定しようとする情熱的な欲求である
- 資本主義と人間
- 市場の法則が社会的個人的関係を支配している
- 経済的利益を求める道具としての人間
- 経済活動=自身の「人格」を商品として自ら売っている
- 財産と名声、権力、家庭といった要素によって個人が抱く不安や懸念の顕在化が防がれた
- この意識的な安定感はあくまで表面的なものに過ぎない
- 資本主義の独占的傾向の増大
◇高坂あかなのまとめ
現代人に付きつけられるその前段階として宗教改革による心理的な個人意識の形成が下地となっている。資本主義に基づく経済活動は個人に自由をもたらし、富や名声、物的な豊かさを与える一方でアイデンティティの喪失や人的な繋がりの希薄化、没個性化といった心的な貧しさをもたらした。プロテスタンティズムの精神に基づく資本主義が与えた自由が二面的なものであることを忘れたがために、私たちは自由の量ばかりを追い求め、その結果、モノの豊かさによって自由の質という問題が隠されてしまった。しかしながら、人間の欲求は絶えず過不足状態であり満たされることはない。そのことにようやく気づいた私たちは、盲目的に信じ込んでいた自由の概念を捨て、自由の本質を捉える契機にしなければならないのではないだろうか。