「自由からの逃走」講読9

◆第六章 ナチズムの心理

  • ナチズムに対する2つの異なる見解
    • 経済的な社会運動ないし政治的な現象
    • 恐ろしく強い自尊心、残虐の喜び、神経症的な分裂といった心理的要因
    • 単一的な要因ではなく、両者が複雑に入り組んでナチズムが形成された
    • ナチズムを受け入れた民衆の性格構造と、ナチズムが提示したイデオロギー心理的特徴がナチズムの基盤にあるのではないか
  • ナチズムの心理的基盤
    • ナチズムに同調も抵抗もせず屈した人々とナチのイデオロギーに深く引きつけられた人々に区別される
    • 労働者階級や自由主義的及びカトリックブルジョアジー
      • ナチズムに対して敵意を抱いていたが、とりわけ労働者階級は組織的な内的抵抗を示さず簡単に服従した
      • 労働者階級は社会主義の実現に希望を見出していたが、相次ぐ敗北によって指導者への不信、政治的組織・活動に対する懐疑を生み出した
    • 小さな商店主、職人、ホワイトカラー労働者からなる下層中産階級
      • ナチズムを熱烈に歓迎した
    • ヒトラーのカリスマ性
      • ヒトラーが実権を握った以上、ヒトラー率いるナチ党に対する反対はドイツに対する反対を意味した
      • ドイツへの帰属意識(=ナチズムへの同調)か孤独(=ナチズムへの反発)か
    • ナチズムへの攻撃=ドイツへの攻撃と捉えられ、ナチでない人間でさえナチズムを擁護した
    • 孤独の恐怖と道徳的原理の弱さによって、ナチズムは大部分の民衆の忠誠を獲得した
  • 下層中産階級の社会的性格
    • 経済的要因に基づく変化
      • 1918年ドイツ革命以前:経済的地位は傾きつつあったが、安定させる多くの因子が存在していた
      • 1923年インフレーション:急速な経済的衰退の侵攻
      • 1929年以降:長期的な不況
    • 心理的要因に基づく変化
      • 敗戦と君主制の崩壊→市民の生活の破壊
      • インフレ→過失のない財の消失、国家に対する信頼の失墜
      • 社会的威信の衰退→革命による労働者階級の威信向上によって相対的に矮小化
      • 家庭という制度の崩壊→世代間のギャップ、若年世代の積極的な闘争
    • 増大する社会的不安が国家社会主義の重要な源泉となった
  • ヒトラーの権力欲の合理化
    • 権威主義的性格の本質=サディズム的衝動とマゾヒズム的騒動との同時的存在
    • 孤立した個人が独り立ちできない無能力と、この孤独を克服するために共棲的関係を求める要求
    • 他国民支配は他国民自身の福祉のためであり、世界の文化の繁栄のためである
      • 「ドイツの繁栄だけでなく、文明一般の最良の利益に奉仕している」という主張
    • サド・マゾイズム的性格に典型的な、強者に対する愛と無力者に対する憎悪

◇高坂あかなのまとめ
正直言うと、この章はさほど関心が湧かないのでささっとだけ読んだ。ナチズムの話になると当時の時代背景であるとか、歴史的な知識が要求されるので、そういったものを踏まえたうえでこの章に当たるとより深く理解できたのではないかと。
ただ、ナチズムの形成という点を一つの事例として、人々がなぜ自由を打ち捨て束縛に走ったのかという点に着目した分析は、自由の本質を掴む一つの糸口になりうる。それをフロムは心理学的な側面から、社会的不満から脱却するために精神的な安定を得るためのナチズムに民衆がすがったと指摘している。