「自由からの逃走」講読10

◆第七章 自由とデモクラシー
 1 個性の幻影

  • 近代デモクラシーの本質
    • あらゆる外的な束縛からの解放による真の個人主義の完成
      • 外的権威に従属せず、思想や感情を自由に表現できる
    • しかし、思想を表現する権利は、私たちが自らの思想を持つことが出来る場合にのみ意味を成す
    • 外的権威からの自由は、私たちが自らの個性を確立するという内的な心理的条件に基づいて初めて成立する
    • 自由の二面性
      • 権威主義的性格に見られる一種の逃避
      • 孤独となった個人における自我の喪失
  • 教育と感情
    • 初期の段階で敵意と嫌悪に基づく感情が抑圧される
      • 外界に対する敵対的な反作用を取り去ることが教育課程の本質的な目標
    • 社会的圧力による「自分のものではない」感情の植えつけ
      • ex)他人を好むこと、無批判的に親しくすること、微笑むこと…
    • 教育によって自発的な感情が広く抑圧され、にせの感情に置き換えられる
  • 禁じられた感情
    • 悲劇感の抑圧はパーソナリティの根本に深く影響する
    • 死の意識と生の悲劇的な面の自覚は人間の基本的性格のひとつである
    • いかなる文化も死の問題に対して独特の方法を持っている
      • ギリシア人:生を強調し、死は生の暗い陰鬱な連続に過ぎない
      • エジプト人:人間の肉体の不滅を信じ、希望を託した
      • ユダヤ人:死の事実を現実的に認め、個人的生命の破滅との和解を試みた
      • キリスト教:死を非現実的なものとし、死後の生活を約束することで不幸を慰めようとした
      • 現代人:単純に死を否定することにより、生の根本的な井罷免を否定している
    • 死や苦悩の自覚=生に対する強力な刺激となる
    • 不条理な死の恐怖と向き合わず抑圧することが、経験の平板さと日々の焦燥を生み出している
  • 科学に基づく精神分析
    • フロイトによる精神分析は人間の感情の深淵を見渡す1つの突破口となった
    • 「正常な」パーソナリティ像を描き出し、それから逸脱するものは精神の病として捉えた
    • 「科学」に基づいた個人の批判に対する抵抗は不可能
  • 独創的な思考を阻害する要因
    • 知識、とりわけ情報の強調
      • 「より多くの事実を知ることで真実の知識に到達する」という迷信
    • すべての真理を相対化して捉えること
      • 相対主義=思考に与えられる本質的な刺激である人間の願望と関心を喪失させる
    • 真理の探究は個人や社会集団の関心や要求に根差している
      • 真理によって利益を得る一方で、真理を隠蔽することで利益を得ることもある
      • この場合、関心を持つことが真理を掴むことに有害となり、どのような種類の関心を抱くかが問題である
    • データを氾濫させ、重要な問題をぼかすこと
    • これらによって自分自身の思考や決断を行う勇気を失わせ、批判的な思考能力を麻痺させている
  • 意志的行為における独創性の欠如
    • 現代人はあまりにも多くの欲望を持っている
    • しかし、彼らは自分の追求している目標が、彼ら自身欲しているものかどうか考えていない
    • 「自分の欲することを知っている」という思い込みに過ぎない
      • 実際には、欲すると予測されるものを欲しているに過ぎない
  • 個人という幻想
    • 私たちの願望や思想、感情は純粋に私たち自身から生み出されたものではなく、外部からもたらされたものである
    • 権威の変遷:教会→国家→良心→匿名(常識や世論)
      • 自ら意思する個人という幻想のもとで生きる自動人形と化している
    • 個人の自我は弱体化、地純粋な安定の基礎となるべき自我の喪失
  • 自己の同一性に対する疑惑
    • 「私」とは何者であるか
    • 同一性を喪失した結果、他人の期待にしたがって行動するときにのみ自我を確信する
      • 自発性と個性の放棄=生命力の妨げ
  • 近代人に対する自由の意味
    • 様々な外的な束縛からの解放≠自分の意志に基づき自由に行為する
    • 匿名の権威に同調し、作られた自己像を取り入れているに過ぎない
    • 順調な経済生活・社会生活の背後には根深い不幸が潜んでいる
      • 生の意味が満たされない、精神的な飢え
    • 機械化した人間の無意識的な苦悩の見落としは、文化的・人間的基盤を脅かす政治機構やイデオロギー、指導者を受け入れることにつながる

◇高坂あかなのまとめ
あんだーこんすとらくしょん