「唯心論と唯物論」講読13

◆十一 心理学と神学との統一

  • 心と神
    • 唯心論における心から導出されるもの:死後の生活であって生前の生活、すなわち思惟および感覚ではない
      • 人々は唯心論の心から神学へ推論することはできても、人間学へ推論することはできない
    • 心理学は経験的神学の何物でもなく、神学こそ合理的心理学である
      • 合理的心理学において説明され経験的心理学において事実としてかていされる<心と肉体の結合>は、心の本質または概念と矛盾するという理由で理性と矛盾する
    • 神学は矛盾のない真の心理学である
      • 神性=肉体(=物質)と心の結合という矛盾から解放された心
      • 心=拘束された神性・潜在的な神性・異種の諸成素によって混合され不純化された神性
    • 心は神性と同様に非身体的非物体的な存在者であり、かつ非場所的非空間的な存在者である
      • であるのにも関わらず、心は身体との不幸な結合によって拘束されている
      • しかし、このことは心の非物質性(=必ずどこかに存在している)と矛盾する
      • 精神は延長していないがゆえにいかなる空間を充たすことができない(デ・ラ・フォージュ)
    • スコラ哲学者の発見
      • 諸々の心は或るどこかに実在するのではなく、或る場所に存在するにすぎず、しかも或る場所に実在するのではない
      • 神もまた同様である
  • 心の非物質性
    • 心と肉体を結合するということは心の非物質性(非身体性)を否定することである
      • 「心は身体をもっている」=「心は身体的(物体的)であり、延長と形態とを持っている」
      • 人間の心は人間の形態をもち、牡牛の心は牡牛の形態をもつ
    • 非物質的心を主張するならば、心と肉体の結合を否認するか、肉体の実存を拒否しなければならない
    • 心は不死であり永遠である
      • 前からの不死(始まりのない不死)=後からの不死(終わりがない不死)
      • 肉体的実存に先行する心の実存=神
    • 人々が抱く空想的な奢侈である唯心論および心理主義は理性的唯物論に他ならない
  • 人間と神
    • 肉体をもつ精神が人間であり、肉体をもたない精神が神である
      • 感性は無意識的に心と神性の間に現れる
      • 意志・道徳が問題となるのではなく、本質・形而上学または心理学が問題となる
      • 人間は感性の外、すなわち心と肉体の結合の外へ出ていくことができず、心の概念の中で心と肉体の結合を廃棄する
      • 人間は想像力を介して感覚論を唯心論と結合させる
    • 神性はただ1つしか存在しないが、心は無数に存在する
      • 心の個別性・数他性・差異性を認めることによって唯心論に不忠実になり、唯物論および感覚論に屈服した