気まぐれすーさいど5

 「春のすーさいど☆ふぇあ」は終わりだと約束したね。あれは嘘でした。*1ということで、まだまだやります「すーさいど☆ふぇあ」。

 道化の華/太宰 治

 大庭葉蔵という無名の洋画家と、カフェバーの女給とが投身心中を図った末、女の方だけが死に、一人助かった葉蔵の入院生活を、この作品の作者である“僕”なる人物が途中で何度も登場しながらストーリーを進めるという異色作であり、のちに発表される「狂言の神」「虚構の春」と併せて『虚構の彷徨』とよばれる三部作の序編としてもあげられる作品である

http://dazaiosamu.exblog.jp/15426016/

 自殺がテーマで、短くてさくっと読めるやつがいいなぁと思いながら探して見つけたもの。著作権が切れているので青空文庫で読めるのも良し*2。旧字旧仮名なのはご愛嬌、むしろ味がある。大庭葉蔵という人物はかの「人間失格」の主人公でもあり、この物語は太宰自身の自殺未遂の経験を元にして書かれている。

 作中の葉蔵は投身自殺に失敗した人間とは思えないくらい飄々としている。そして、彼の元を訪ねる友人との交流も控えめというか、一歩引いたもの。過剰に干渉せず希薄な付き合いだが、束縛されない分かえって居心地が良いのかもしれない。自分自身の生にも、他者との関わりにも、どこか無情感のようなものを漂わせる葉蔵からはある種の諦めのようなものが感じられ、生きることの虚しさが伝わってくる。

 物語の所々に作者が出てきては「(作品の)雰囲気が滅茶苦茶になってしまった」だとか「僕は自信を無くした」、「どだいこの小説は面白くない」と挟み込んでくる作風は衝撃的で、俄然太宰治という作家に興味が湧いてきた。その中で、こんなことも書いている。

 僕はなぜ小説を書くのだろう。新進作家としての栄光が欲しいのか。もしくは金が欲しいのか。(中略)仮に一言答えておこう。「復讐。」

 とある本に引用されていた一文が気になっているので、今度は「斜陽」でも読んでみようかと思う。人間は何のために生まれてきたのでしょうかね?

 個人的な萌えポイントは葉蔵の世話をする看護婦の眞野。編み物してたり、怪談の前に「小菅さん、大丈夫?」と気遣ったり、意地悪な婦長に理不尽なことを言われて涙したり。あなたはどうしてそんなにチャーミングなんでせうか? ボクの頭の中に現れた茶髪にショートカットな白衣の天使。この作品が書かれた時代の看護婦と大きくかけ離れてはいるが……

*1:映画「コマンドー」より

*2:お金出して本を買って、読みづらくてつまらなかったらもはや苦行