気まぐれすーさいど6

 闇に葬ったはずなのに…… どっこいあいつは生きていた。「春のすーさいど☆ふぇあ」、6日目でございます。

 地獄変/芥川 龍之介

 平安時代に良秀という名の高名な画師がいた。絵の腕前は大したものだが、その気性は傲慢そのもので、とかく人に嫌われていた。その良秀は大殿の命により地獄変の屏風を描く運びとなるが、彼は実際に見たものしか描けないと言い……

 高校の現代文の授業で取り上げられることも多い作品らしいのだけど、ボクの場合は「羅生門」でした。有名な作品だし、あらすじは省略。*1

 またしても青空文庫で読んだので、仮名遣いが古くてしっかりと読み解いた訳じゃないけど、やはり名著である所以が直感的に分かったというか、純粋に面白いなと。今日にでも、改めて小説版を買って読み直してみたい。

 地獄変の屏風を描くために、我が娘が焼き殺される様を嬉しそうに、また厳かに眺め、屏風を描き上げた後に自殺する。良秀の自殺については「芸術に於ける成功は、同時に現世的な敗北を意味する*2」だとか「屏風が完成した後、<絵師>でも<父>でもない自分に気づき、存在価値を失ったから」と興味深い考察も。*3

 良秀の異常なまでの芸術に対する執着によって、大殿の狡猾さであるとか周りの人間の浅はかさのようなものがはっきりと浮彫にされ、屏風を描き上げた後の世界は良秀にとって地獄のように見えたことだろう。あぁ、薄っぺらい感想しか出てこなくて、ボクはたいそう自身を無くした。*4

 ところで、良秀の弟子には「生れつき色の白い女のやうな男」がいて、彼は良秀に呼びつけられてミミズクに襲われる。
―妄想ココカラ―
「先生、お呼びですか?」
可愛らしい弟子が部屋に入ると、良秀は見慣れない一羽の鳥に肉を与えていた。大きさといい、羽毛、大きな眼といい、その鳥は猫に似ていた。
「どうだい、よく懐いているだろう?」
舌をなめずりながら良秀が言う。
「その鳥は何という鳥ですか? 私は見たことがありませんが……」
「これだから都会育ちは。これはミミズクと言うのだ」
肉を食べ終えたミミズクを良秀がそっと一撫ですると、ミミズクは鋭く一鳴きし、可愛らしい弟子に襲い掛かる。
「あぅぅ!」
咄嗟に弟子は袖を振りかざす。慌てて顔を隠して居なかったら、その可愛い顔に傷の一つや二つ、付けられていただろう。弟子は師匠の前だということを忘れ、部屋の中を逃げ惑う。執拗に弟子を狙うミミズク。
「えぅ、ミミズクさん、やめてぇ!」
良秀はその騒ぎを極めて冷静に眺めながら、目に大粒の涙を浮かべてミミズクに怯える可愛らしい弟子の様子を写していた。男の娘萌え、萌芽の瞬間である。
―妄想ココマデ―

 芥川龍之介先生、ありがとうございます。別の弟子(これも男)に至っては、着ているものをひっぺがされて鎖で縛られたりする。
 男の娘に胸をときめかせながら、いよいよおなかと首を括りつつある高坂でした。

 伊集院光氏がラジオで言っていた、芥川龍之介の生前の映像を見つけたので、ついでに載せておく。

*1:もっとも、これまで読んだことが無かったボクが言うのもおかしな話だけど

*2:「芸術のためには犠牲を厭わない」という芸術至上主義がなんとかとか

*3:ネットに転がってた、大学の先生の考察

*4:昨日の日記参照